2023年2月12日日曜日

認知症の分類

 認知機能障害だけでなく社会生活の障害を確認することが大切である(図1)。



生活機能の低下があれば認知症を疑い、概ね自立している場合は、MCIを考える。

〈軽度認知障害(MCI)の定義〉

  • ・年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する。
  • ・本人または家族による物忘れの訴えがある。
  • ・全般的な認知機能は正常範囲である。
  • ・日常生活動作は自立している。
  • ・認知症ではない。
 認知機能障害が疑われる場合は、生活機能(手段的ADLなど)の障害について問診を行う。

ADLとは?

ADLとは日常生活動作とも呼ばれ、日常生活に必要不可欠な基本動作を指します。

ADLは高齢者や障害を持っている方が「他人のサポートなしでどのくらい独立した日常生活が送れるか」を図る重要な評価基準です。

英語ではActivities of Daily Livingと表記し、Aは動作、DLは日常生活のことです。

具体的には下記がADLに該当します。

・移動
・食事
・排泄
・入浴
・洗顔
・買い物

ADLには、BADLとIADLの2種類に大別でき、FIMやバーセルインデックスといった方法でADLを評価します。

ADLを評価する目的は、介護が必要なレベルの把握、今後の看護・リハビリ計画の立案、リハビリの効果を測定するのに役立てることです。

次の章で、ADLの種類をまとめて特徴を説明します。

ADLの種類

ADLはBADLとIADLに分けられ、それぞれの特徴は下記のとおりです。

BADL(基本的日常生活動作)

BADL(Basic Activities of Daily Living)とは、必要最低限の日常生活動作(ADL)を指します。

具体的には、生活する上で必要となる基本的な動作である移乗、移動、食事、着替え、排泄、入浴、歯磨きや化粧といった整容のことです。

IADL(手段的日常生活動作)

IADL(Instrumental Activities of Daily Living)とは、BADLの次の段階である日常生活動作を指します。

例えば、料理や洗濯、買い物、交通機関の利用、薬の管理、お金の管理、電話などでコミュニケーションを取る、趣味といったBADLよりも複雑な動作のことです。

IADLはロートンの尺度、老研式活動能力指標、DASC-21などで評価をします。

IADLは日常動作に加えて自らの理解力・判断力をともなう指標であり、IADLを維持していくことは、生活の質をキープできると考えられています。

一般的にBADLよりも、複雑な動作であるIADLが先に低下し始めます。そのためBADLと区別してIADLが何かを理解し、日ごろからIADLの状態を把握しておくことで、心身機能の衰退に気づきやすくなるといった効果が期待できるでしょう。

ADLの評価方法

ADLを評価する方法として、FIMとバーセルインデックスの2つに焦点を当ててご紹介します。

FIM

FIM(Functional Independence Measure)とは機能的自立度評価法と言い、ADLに関する18項目を7段階で評価します。

日常生活で行っているADLを評価し、コミュニケーション、社会的認知を測定するため日常生活の変化を把握するのに適したADL評価工法です。

バーセルインデックス(BI)

バーセルインデックス(Barthel Index)とは日常生活の能力を評価するものです。

環境や条件といった詳細な設定はないため評価者がすぐに実施しやすく、全体像をつかみやすいといった特徴があります。

評価項目は10項目で、各項目を0~15点で評価します。

バーセルインデックス(BI)について詳しく知りたい方は、こちらも参考にしてみてください。

FIMの評価方法

FIMはADLを①運動項目、②認知項目に大別され、点数が高いと介護の必要性が低い(ADLが高い)とみなされます。

次に挙げる項目がFIMの評価項目です。

運動項目
セルフケア食事、整容、清拭、更衣上半身、更衣下半身、トイレ動作
排せつコントロール排尿管理、排便管理
移乗ベッドや椅子への移乗、トイレ移乗、浴槽やシャワーへの移乗
移動歩行や車椅子、階段

 

認知項目
コミュニケーション理解、表出
社会的認知社会的交流、問題解決、記憶

 

FIMを活用することで、自立度と介護量をデータ化でき、対象者や家族にも現在の能力を説明できます。また、FIMの結果をもとにケアや治療の計画を立てられるといったメリットがあります。

バーセルインデックス(BI)の評価方法

バーセルインデックスは10項目を自立度に応じて採点し、一般的には100点満点が全自立、0点は全介助で点数が下がると介助の必要度が高くなります。

バーセルインデックスの10項目は、以下の通りです。

・移乗
・歩行
・整容
・入浴
・階段昇降
・食事
・着替え
・トイレ動作
・排便コントロール
・排尿コントロール

バーセルインデックスは採点が簡単なため短時間での実施と点数化が可能です。

また100点満点で評価するため分かりやすく、世界共通の評価方法というメリットがあります。

一方バーセルインデックスのデメリットとして、FIMよりも評価が大まかであり、ADL能力の詳細を把握しづらい点です。

FIMとBIの違いについては別記事にて解説しています。

こちらも参考にしていただけると幸いです。

参考:医療法人だいな「リハビリテーション普及プログラム
  :一般社団法人 日本老年医学会「ADLの評価法
判断に迷う病名:

先日、かなり遠いところから80代の男性が奥さんと一緒に見えました。何やら書類を持っています。みると警察の診断書提出命令とあります。つまりこの人は田舎暮らしで車を運転しているのだけれども、多分何かおかしな運転をしたらしく、警察から認知症かどうか診断して貰えという命令を出されてしまったのです。
ほー、警察ってのは市民に命令出来るんだと思いましたが、その書類を見て私ははたと困ってしまったのです。

認知機能が低下していることだけを診断するのでは無く、アルツハイマー病か、レビー小体病か、前頭側頭型認知症か、脳血管性認知症か診断しろというのです。

これは認知機能検査一枚では診断出来ません。脳のMRIが必要であります。しかしこの人は警察の命令書で来院したので、医療保健が使えません。診断書というのは自費なのです。MRIを自費でやったら自己負担が診断書料含めて2万円近くになります。
困ったなと思って宮城県運転免許センターの所轄部署に電話しました。そうしたら担当者が「あー、簡単な認知テストだけで良いですから」というのです。それではとMMSEという一般的な認知テストをやると、明らかに認知症のレベルです。
ただ質問に対する答えの間違い方が変です。アルツハイマー型認知症には特有の間違え方があるのですが、それに当て嵌まりません。といって幻視もないのでレビー小体型認知症でも無いです。指に振戦が有りつま先を揃えて立たせると立てないので、パーキンソン病に付随した認知症かなあと思いました。
それで、ご本人と奥さんに「これだけでははっきりとどんな認知症か分かりませんがともかく認知症レベルです。車の運転は無理と診断せざるを得ません。
ただしここまでは警察の命令に従っただけですが、これからあなたの治療をするには脳のMRIが必要です。ここからは保険診療でやりますが、当院にMRIはないので別の病院に紹介状書きますからMRIを撮って貰ってください」と話したのです。
そうしたらですね。
奥さんが驚くべき答えをしました。
「MRIなら去年石巻赤十字病院で撮って貰いました」
これは変なのです。石巻赤十字には日頃救急で大変お世話になっていますが、あそこの神経内科は認知症を診ません。診ないとはっきり宣言しています。その石巻日赤の神経内科がわざわざ入院させて脳のMRIを撮った・・・?変であります。
そうなんですか、それでなんという病気だと言われました?ときいたのですがそこはご本人も奥さんも要を得ません。ただご本人曰く、腹ばいにされられて何時間も背中に何かやられたというのです。
だんだん真相が見えてきました。石巻日赤に紹介状を書いて、こういう人がいるが何の疾患でしたかと問い合わせたら、結果は思った通りでした。
正常圧水頭症です。タップテストで一定の認知機能の改善を認めましたがそれ以上の治療はご本人が希望されませんでした」
警察に出す診断書は全部書き直しになりました。
診断「正常圧水頭症」
予後「シャント手術ないし漢方薬五苓散(ごれいさん)の投与で6か月以内に認知機能が改善する可能性がある」
であります。後日運転免許センターから電話が掛かってきて、「漢方薬で認知症がよくなるんですか?と言うから、そうですよと答えました。正常圧水頭症は認知機能低下を示し、基本的な治療法は脳腹腔シャントですが、最近は五苓散で改善することが広く知られており、脳外科の先生もまずは五苓散を投与します。
あの人その後どうなったかなあ。随分遠いところの人だったので、その後来てないのですが。

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