2023年2月22日水曜日

側脳室前角の拡大

側脳室(そくのうしつ、英語:lateral ventricle)とは、左右の大脳半球の内部に対称性に存在する脳脊髄液(cerebrospinal fluid、以下CSF)で満たされた一対の空間(脳室)である。

側脳室を満たす脳脊髄液は、内側の室間孔(interventricular foramen、またはモンロー孔、Monro foramen)を通じて第三脳室に流れ出る。(側脳室は左右一対あることから、これらを第一と第二に数え、それに続く脳室は「第三脳室」「第四脳室」と呼ばれている。しかし左右の側脳室のどちらかを第一脳室と呼ぶようなことはなく、あくまで「右側脳室」「左側脳室」である。)

側脳室は大脳半球の形に沿って、(外側から見たときに)Cの字型に広がっている。その背側部分は中心部と呼ばれる。

中心部から吻側に延びた部分は前角、中心部の尾側から急なカーブを作って吻側腹側に延びた部分は下角という。中心部と下角の境界あたりでは、後頭葉に入る後角が出ている。

各部分の壁になっているものを次に挙げる。なお、各部分の区別は厳密なものではないから、対応する大脳葉もおおむねその位置にあるといった程度に理解されたい。

  • 前角は前頭葉の中にある。背側から吻側にかけて脳梁がかぶさっている。腹側から外側にかけては尾状核が面し、前角は丸みのある尾状核を内側背側から抱き込む覆いのような形になっている。内側は透明中隔を隔てて左右の側脳室が隣り合っている。透明中隔の腹側端には脳弓があり、脳弓の吻側端は折れかえった脳梁の先端近くでモンロー孔を残して終わっている。モンロー孔は内側腹側の第三脳室に開く。
  • 中心部は頭頂葉の中にある。吻側の前角から続いて、背側は脳梁、内側は透明中隔である。腹側は内側部分が視床、外側部分が尾状核に面している。尾状核は尾側で細くなり、外側に延びているので、側脳室中心部の腹側壁は、吻側ではほとんど尾状核だけでできているが、尾側ほど視床が大きい割合を占める。中心部は上下に潰れた平らな形をしており、腹側壁外側部の尾状核が外側壁を兼ねている。尾側壁の多くは脳梁だが、側脳室はさらに外側へ延びて下角とつながっているので、脳梁から外側にはみ出している。その部分の壁は脳梁に続く後頭葉の白質である。
  • 後角は後頭葉の中にある。内側の吻側部分で脳梁に接し、後頭葉の白質に囲まれている。
  • 下角は側頭葉の中にある。内側の被殻を抱き込む形に広がり、外側部分は側頭葉の白質に囲まれている。

側脳室の脈絡叢で作られたCSFはモンロー孔を通って第三脳室に入り、第三脳室の脈絡叢で作られた分とともに中脳水道から第四脳室に向かう。



 側脳室前角の異常:

髄液の流れが緩やかに障害を受け、脳脊髄液がゆっくりと貯溜し(脳室拡大)、頭蓋内圧亢進は来たさず、頭痛や嘔吐、意識障害はなく、脳室の拡大により脳が圧迫され、脳の機能が徐々に低下するものを慢性水頭症(正常圧水頭症)と呼びます。

髄液の流れが急に障害を受け、脳脊髄液が急激に貯溜し(脳室拡大)、頭蓋内圧が急激に上昇し、頭蓋内圧亢進症状(頭痛や嘔吐)、意識障害を来すものを急性水頭症と呼びます。



慢性水頭症の症状:

血の巡りが悪い    いらいらする   錯覚する   妄想する   など。

脳の各部の名称

脳梁‣脳弓の位置




側脳室と脈絡叢

幼児と成人の比較





                   側脳室の立体図
側頭・前頭の接合部

脳弓、脳梁、海馬

病例:
先日、かなり遠いところから80代の男性が奥さんと一緒に見えました。何やら書類を持っています。みると警察の診断書提出命令とあります。つまりこの人は田舎暮らしで車を運転しているのだけれども、多分何かおかしな運転をしたらしく、警察から認知症かどうか診断して貰えという命令を出されてしまったのです。
ほー、警察ってのは市民に命令出来るんだと思いましたが、その書類を見て私ははたと困ってしまったのです。認知機能が低下していることだけを診断するのでは無く、アルツハイマー病か、    いうのです。これは認知機能検査一枚では診断出来ません。脳のMRIが必要であります。しかしこの人は警察の命令書で来院したので、医療保健が使えません。診断書というのは自費なのです。MRIを自費でやったら自己負担が診断書料含めて2万円近くになります。
困ったなと思って宮城県運転免許センターの所轄部署に電話しました。そうしたら担当者が「あー、簡単な認知テストだけで良いですから」というのです。それではとMMSEという一般的な認知テストをやると、明らかに認知症のレベルです。ただ質問に対する答えの間違い方が変です。アルツハイマー型認知症には特有の間違え方があるのですが、それに当て嵌まりません。といって幻視もないのでレビー小体型認知症でも無いです。指に振戦が有りつま先を揃えて立たせると立てないので、パーキンソン病に付随した認知症かなあと思いました。
それで、ご本人と奥さんに「これだけでははっきりとどんな認知症か分かりませんがともかく認知症レベルです。車の運転は無理と診断せざるを得ません。ただしここまでは警察の命令に従っただけですが、これからあなたの治療をするには脳のMRIが必要です。ここからは保険診療でやりますが、当院にMRIはないので別の病院に紹介状書きますからMRIを撮って貰ってください」と話したのです。
そうしたらですね。
奥さんが驚くべき答えをしました。
「MRIなら去年石巻赤十字病院で撮って貰いました」
これは変なのです。石巻赤十字には日頃救急で大変お世話になっていますが、あそこの神経内科は認知症を診ません。診ないとはっきり宣言しています。その石巻日赤の神経内科がわざわざ入院させて脳のMRIを撮った・・・?変であります。
そうなんですか、それでなんという病気だと言われました?ときいたのですがそこはご本人も奥さんも要を得ません。ただご本人曰く、腹ばいにされられて何時間も背中に何かやられたというのです。
だんだん真相が見えてきました。石巻日赤に紹介状を書いて、こういう人がいるが何の疾患でしたかと問い合わせたら、結果は思った通りでした。
「正常圧水頭症です。タップテストで一定の認知機能の改善を認めましたがそれ以上の治療はご本人が希望されませんでした」
警察に出す診断書は全部書き直しになりました。
診断「正常圧水頭症」
予後「シャント手術ないし漢方薬五苓散(ごれいさん)の投与で6か月以内に認知機能が改善する可能性がある」
であります。後日運転免許センターから電話が掛かってきて、「漢方薬で認知症がよくなるんですか?と言うから、そうですよと答えました。正常圧水頭症は認知機能低下を示し、基本的な治療法は脳腹腔シャントですが、最近は五苓散で改善することが広く知られており、脳外科の先生もまずは五苓散を投与します。あの人その後どうなったかなあ。随分遠いところの人だったので、その後来てないのですが。

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