日本人は、成功ではなく、没落の姿に美しさを感じ、心惹かれ、胸をあつくする。それが日本人特有の性情であり、、歴史の特長であると、彼はかんがえた。
モリスが論じた典型的な悲劇の英雄は、日本武尊、捕鳥部万、有間皇子、菅原道真、源義経、楠木正成、そして17世紀の天草四郎、大塩平八郎、現代では西郷隆盛などである。さらに最後にカミカゼ特攻の戦士たちが論じられる。
彼らは、成功よりも、誠をつらぬくことを重んじ、そのひとの努力と犠牲の死は、実益を重視する現実の世界でも、大きな価値があったはずだとモリスは強調する。
このような考えは、この著書のまえから、モリスの論文で述べられていたようだ。
三島由紀夫は、そのことを良くしっていたので、1970年の劇的な切腹の前に、モリスに手紙を書き、「・・・あなたは私の行き着くところを理解できる実に数少ないうとのひとりだと思っています。陽明学に影響された私はこう考えてきました。行動なしの知識は充分な知識ならず、また行動そのものは、その効果を問題にしない、と」。
国際基督教大学の斉藤和明教授は、日本の英雄たちが精神的理想のために生きたいきざまは、基督教徒の信仰への決断と同じで、ゆるぎない忠誠心をもっていたのではないかと問いかけている。
しかし現在のマスコミでは、楠木正成の忠臣伝説などと表現し、悲劇の英雄たちを、軽視している。
楠木正成像 |
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