2023年7月21日金曜日

[大酸化事変 ] 鉄と藍藻らんそう (ラン藻) /シアノバクテリア (cyanobacteria)

 地質学的な証拠からはおよそ24億年前に地球が急速に酸化的環境に変化していったことが知られており、大酸化事変 (大酸化イベント、Great Oxygenation Event [GOE]) とよばれる

これは光合成によって作られた酸素が原因であるというのが最も有力な説明であり、そのため、藍藻は少なくともGOEまでには誕生していたと考えられている。

しかしながら、GOE以前にも少量の酸素が存在していたことを示す証拠が複数あり、藍藻の誕生がどこまで遡るのかが議論となっている

太古代の地層に多く見られる縞状鉄鉱床は海水中の鉄などが当時すでに存在した酸素によって酸化された結果であるとする説もある.

一方で藍藻の起源をGOEとほぼ同時期とみなす研究もある

一時期、藍藻固有のバイオマーカーが太古代から見つかり、GOE以前の藍藻および酸素の存在を示す証拠として注目されたが、その後の研究で、見つかったバイオマーカーは後世の汚染である可能性が強く、さらにバイオマーカー自体が藍藻に固有ではないことが判明している

そのほか、藍藻と考えられる化石にストロマトライトがある

現在の地球上に見られるストロマトライトの形成にすべて藍藻が関わっていることから、ストロマトライトの化石も過去の藍藻の存在を示す証拠として扱われていたが、現在ではこれは非生物起源や、藍藻以外の光合成細菌由来のものも含まれていると考えられている。そのため、ストロマトライト単独で藍藻の進化について議論することは難しい。

いずれにせよ、藍藻の誕生によって地球環境は激変し (好気的環境、有機物安定的供給、オゾン層形成など)、現在の地球生態系の基礎が築かれた。

酸素発生型光合成生物は藍藻だけである時代が長く続いたが、その後 (ある研究では15億年以上前)、ある真核生物にある藍藻が細胞内共生し、やがてこの共生藍藻の増殖や代謝が宿主である真核生物に制御されるようになり、最終的に葉緑体 (色素体) とよばれる細胞小器官へと変化した。


この際、藍藻の細胞膜外膜が色素体の2枚の膜になったと考えられている。この現象は一次共生 (primary endosymbiosis) とよばれ、これによって真核生物が酸素発生型光合成能を獲得した。生物の歴史の中で一次共生は唯1回の現象であったと考えられており、全ての葉緑体は単一の一次共生に由来する (その後、二次共生を経たものもある)。

多数の遺伝子を用いた系統解析から、一次共生において共生者となった藍藻は、グロエオマルガリータ属 (Gloeomargarita) という淡水産単細胞性藍藻に近縁な藍藻であったことが示唆されている。

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