2023年4月23日日曜日

「業の花びら」にみる 宮澤賢治と父親との関係

 



  [業の花びら]    宮澤 賢治

夜の湿気と風がさびしくいりまじり

 松とやなぎの林はくろく 

そらには暗い業の花びらがいっぱいで

わたくしは神々の名を録したことから 

〔山地の神々を舞台の上にうつしたために〕

 はげしく寒くふるへてゐる 


ああ誰か来てわたくしに云へ 

億の巨匠カミ並んで生まれ 

しかも互ひに相犯さない 

明るい世界はかならず来ると

しかもいったい 

たれがわたくしにあてにならうか 

どんなことが起らうと 

わたくしはだまってひとり行くだけだ 

…… 唐ュでさぎが鳴いてゐる   夜どほし赤い眼を燃して   

  つめたい沼に立ち通すのか…… 

   (祀られざるも 神には神の身土がある)


松並木から雫が降り 

そらのはるかな高みでは 

風もごうごう吹いてゐて 

わつかのさびしい星群が 

雲から洗ひ出されては 

その偶然な二っつが 

黄いうな芒で結んだり 

残りの巨きな草穂の影が 

ぼんやり雲にうつったりする

岩手県花巻市出身の詩人・童話作家の宮沢賢治。死後3年後(昭和11年)、賢治を記念する詩碑が建てられた。



石碑の詩は雨にもまけず



碑文は、有名な賢治の代表作「雨ニモマケズ」だが、詩を選ぶにあたって関係者が協議した際、最初に賢治の父親が提案したのは「雨ニモマケズ」ではなく、「業の花びら」という詩だったという。

父・政次郎は、なぜ数ある賢治の作品の中から詩「業の花びら」を、賢治の詩碑に相応しいと考えたのか?
父と子にとって“業”は、どういう意味を持っていたのだろうか。
賢治に関する著書もあるディレクター今野勉が、その謎を追う。
2018年に放送し、話題になった4K放送特番「映像詩 宮沢賢治 銀河への旅〜慟哭の愛と祈り〜」の内容を踏まえ、新たに、今まで様々な推測がなされてきた「父親との関係」「父子二人だけの関西旅行」を検証、“業”をテーマにした詩「業の花びら」や童話「二十六夜」の真実を解き明かす番組であった。

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