認知症全体の約9割を、大きく分けて次の4種類に分類することができ、これらは「4大認知症」と呼ばれている。
《4大認知症》
1)●アルツハイマー型認知症
2)●前頭側頭型(ぜんとうそくとうがた)認知症
(前頭側頭葉変性症のひとつ)
3)●レビー小体型認知症
4)●脳血管性認知症
1)■アルツハイマー型認知症
異常が起こりやすい箇所:海馬、頭頂葉を含む後方領域
●記憶を司る海馬(かいば)を中心に、頭頂葉(とうちょうよう)まで。広範囲で脳が萎縮することによって起こります。
●主に記憶障害や見当識(日付や時間、場所などを認識する機能)障害、判断力の低下などの症状が現れます。
アルツハイマー型認知症
症状 初期 ・ちょっとしたことを忘れる「もの忘れ」
・行動自体を忘れて覚えていない
・近い時期の出来事を覚えられなくなる
・家事などのやるべきことを順序立ててできなくなる中期 ・怒りっぽいなど、性格に変化が出てくる
・日常生活でサポートが常に必要になる
・失禁する
・外出して帰宅できなくなるさまよい歩きが起きるアルツハイマー型認知症は、認知症患者の約半数を占めていると言われています。脳の神経細胞が変性して一部が萎縮していく過程で発症し、男性よりも女性の比率が高いのが特徴。アルツハイマー型認知症の原因は、脳の神経にたんぱく質の一種である「アミロイドβ」や「タウ(タウたんぱく質)」が蓄積することと考えられています。
不要になった脳内物質が分解、排出されずに健康な神経細胞の働きが弱まり、脳細胞が死んでしまいます。加齢や遺伝に起因すると指摘されていますが、根本的なことはいまだ不明。発症後はゆるやかに進行していく点が特徴です。
2)■前頭側頭型(ぜんとうそくとうがた)認知症
異常が起こりやすい箇所:前頭葉、側頭葉
●人格を司る前頭葉(ぜんとうよう)と、言語を司る側頭葉(そくとうよう)が萎縮することによって起こります。
●人格が変化して思いのままに行動しようとする、言葉の理解ができなくなる、などの症状が現れます。
前頭側頭型認知症
症状 初期 ・反社会的な行動:万引きや、よその部屋から黙って物を拝借する
・常同行動:何度も同じコースを歩いたり、決まった時間に同じ行動をとったりする中期 ・言語障害:同じ言葉を繰り返し、言葉自体が短くなり、ボキャブラリーが乏しくなる
・自発性低下:抑うつ状態になり、やる気がなくなる前頭側頭型認知症は若年層に起こりやすい認知症です。平均的な発症年齢は55歳前後と言われており、国の難病にも指定されています。
前頭側頭型認知症は前頭葉や側頭葉の萎縮が原因で起こります。脳の前頭葉は人格や行動をつかさどる部位なので、発症すると社会的な行動がとれなくなったり感情の抑制がきかなくなったりします。身だしなみに気を配れなくなる方や、暴言が増える方もいるでしょう。
側頭葉は言語をつかさどる部位でもあるため、萎縮がはじまると相手の言葉の意味がわからなくなったり、喋りにくくなったりすることも。遺伝による発症も指摘されている稀なケースの認知症です。
進行速度は人それぞれですが、進行につれて初期の異常行動が弱まり、徐々に無気力になる傾向に。発症してからの平均寿命は6~9年です。
3)■レビー小体型認知症
異常が起こりやすい箇所:海馬、後頭葉
●記憶を司る海馬から、視覚を司る後頭葉(こうとうよう)までの広範囲
で血流が悪くなり、機能が低下することによって起こります。
●初期症状に幻視を訴えることが多く、睡眠障害が初発症状となることが多い。
レビー小体型認知症
症状 初期 ・認知機能の低下(アルツハイマー型認知症と似ている)
・幻視、幻覚:「知らない人がいる」「枕元に子どもが座っている」などの症状が出る中期 ・足がもつれる
・歩幅が狭くなる
・パーキンソン症状が出てくる
・身体が固まりやすくなったり、手が震えたりするレビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症の次に患者数が多いとされる認知症です。脳の神経細胞が減少することで発症し、40歳頃から症状が現れる方も。男性の発症リスクは女性の約2倍と言われています。
手足の震え、身体のこわばり、歩行障害などが起き、転倒しやすくなるため注意が必要です。特徴的な幻視、うつ症状、睡眠時の異常行動のほかにも、気分や態度、行動がコロコロ変わるのが特徴。
レビー小体型認知症は、レビー小体と呼ばれるたんぱく質のかたまりが、脳の神経細胞を壊すことで起きます。レビー小体は脳に限らず全身の神経細胞に現れるため、大脳皮質にできるとレビー小体型認知症、脳幹に増えるとパーキンソン病になります。
レビー小体型認知症は進行の早さが特徴で、アルツハイマー型認知症や血管性認知症と比べても進行速度が速く、発症後の平均寿命も短いです。
4)■脳血管性認知症
異常が起こりやすい箇所:脳血管(全体)
●脳梗塞や脳出血など、脳内の血管に異常が起こることによって起こります。
●脳梗塞を多発した方が発症するケースが最も多く、脳血管障害の大きさが認知症の程度と関係してきます。
※脳血管性認知症は、脳血管の異常によって起こる認知症の総称です。
血管性認知症
症状 初期 ・歩行障害:歩く速度が遅くなったり、歩幅が狭くなったりする
・意欲の低下:無気力になり、自発性がなくなる。引きこもりになることもある中期 ・構音障害:ろれつが回らなくなる
・嚥下障害:飲み込みがうまくできなくなったり、むせたりする
・記憶障害:記憶を思い出すのに時間がかかる
・手足のしびれ、麻痺、排尿障害血管性認知症とは認知症患者の約2割を占めている認知症で、脳の血管障害によって生じるため、認知機能がまだらに保たれていることが特徴。女性よりも、比較的男性に多く見られる症状です。
特定の分野のことはしっかりと認識できる一方、ほかのことはできないなどの特徴から「まだら認知症」とも呼ばれています。
血管性認知症の原因は、脳出血や脳梗塞など脳内血管に起こる何らかの障害とされています。
たとえば脳出血の場合は脳内血管が破れて出血。溜まった血液で脳細胞が圧迫され血管性認知症が発症します。
脳梗塞の場合は脳の血管が詰まり、十分な血液が届かなくなった部分の脳細胞が死滅。認知機能が低下します。脳梗塞が起きるたび症状が悪化するため病状にばらつきがあり、突然障害が出たり、落ち着いていたりします。
事例:先日、かなり遠いところから80代の男性が奥さんと一緒に見えました。何やら書類を持っています。みると警察の診断書提出命令とあります。つまりこの人は田舎暮らしで車を運転しているのだけれども、多分何かおかしな運転をしたらしく、警察から認知症かどうか診断して貰えという命令を出されてしまったのです。
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