2023年4月13日木曜日

EPO産生細胞

 腎臓で造血ホルモン(エリスロポエチン:EPO)を生み出す細胞が、EPO産生に特化したプロ集団であることを、京都大学の柳田素子教授(WPI-ASHBi主任研究者)と金子惠一特定病院助教らの研究グループが明らかにしました。副作用の少ない腎性貧血治療薬の開発に貢献する成果です。




慢性腎臓病は、成人の8人に1人が罹ると言われ、患者の多くが貧血(腎性貧血)を発症します。

腎性貧血は、腎臓の線維芽細胞でEPOを生み出す能力が低下し、赤血球が減少するために起こることが知られています。しかし、腎障害によりEPOを産生できなくなった細胞の観察が難しかったため、EPO産生細胞の性質には不明な点が多く残されたままでした。

柳田教授らは、EPO産生細胞を、任意の時点で標識し、永久に追跡できる遺伝子組み換えマウスを作成し、健康な腎臓と、慢性腎臓病の腎臓におけるEPO産生細胞の振る舞いを解析しました。

その結果、健康な腎臓では、線維芽細胞のごく一部に当たるEPO産生細胞が、繰り返しEPOを産生していました。

一方、慢性腎臓病の腎臓では、EPO産生細胞はEPOを産み出す能力を失い、腎機能を損なう線維化に寄与するものの、腎障害の回復とともに、その能力を取り戻すことが明らかになりました。

EPO産生細胞は、EPOを生み出すことに特化した、プロフェッショナルな細胞集団だったのです。

現在、腎性貧血の治療薬として、合成EPOの注射薬や、自分自身のEPOを増やす治療薬(HIF-PH阻害薬)が用いられています。

しかし、いずれの薬剤においても、血栓症や腫瘍増大などの副作用が懸念されています。

柳田教授らは、「より副作用の少ない治療薬の開発には、EPO産生細胞の性質をさらに究明しなくてはなりません。今回作成した遺伝子組み換えマウスを活用して、EPO産生細胞を回復させる方法の開発にも取り組んでいきます」と話しています。

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