2021年12月2日木曜日

薬王寺廃寺跡

 

薬王寺廃寺跡

古賀市薬王寺温泉の近くにある山の中腹に、薬王寺廃寺跡があります。
平安時代の山岳寺院跡です。江戸時代には礎石らしいものがあることが記され、地元では古い瓦が見つかることで知られていました。
寺は斜面を造成した平地に建てられていました。

平成3(1991)年からの調査により大小2棟の建物跡と半円の石垣状遺構、瓦窯跡が確認されました。
古賀市文化財課の森下さんから、調査結果の報告をききました。

広い平地に基壇を伴った大型の礎石建物があります。基壇は前面と両側面は石で囲い、背後は瓦を敷き詰めています。


建物の周囲からは大量の瓦が出土しました。また別の平地では小型の礎石建物が見つかりました。鐘楼か経蔵だったのかもしれません。半円の石垣状遺構は大型建物正面の斜面から発見されました。用途は不明ですが多量の灯明皿が出土しています。大型礎石建物の東側では登り窯も発見されました。
多量の瓦片が出土したため、瓦窯と考えられます。寺院とこれに伴う瓦窯がそろって発見されることは珍しく貴重な資料となりました。

現在伝わっているものは考古学的な資料ばかりですが、開基伝承では病気を治す力を持つ霊泉(薬王寺温泉)によって健康を取り戻した男が出家して薬師如来を祀ったことが寺の起りと伝えられています。

薬王寺廃寺の出土遺物 薬王寺廃寺から出土した遺物の大半は瓦と日常に用いられた土器です。
瓦は「自」という文字を模様に取り入れたもので、薬王寺廃寺以外では遠賀郡芦屋町の浜口廃寺で発見されています。ほかに鬼瓦も出土しており、吊り上った大目玉と牙をむき出した大きな口で威嚇する姿は迫力があります。このほか緑釉陶器や中国製の白磁なども出土しました。これらの出土品から、薬王寺廃寺は10世紀から12世紀にかけて続いたものと考えています。
 作成 2009年9月   

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