2021年12月13日月曜日

海洋の表層と深層の循環

 気象庁と放送大学の解説をまとめました。

海洋表層の循環

 海面から1000m深程度までの海洋の流れを、長期間にわたって平均すると、海洋にはいくつかの大規模な水平方向の流れがあります。

全球規模でみると、南極大陸周囲に流量の大きい東向きの海流(南極環流)があり、各大洋(太平洋・大西洋・インド洋)の亜熱帯域などに大規模な循環が存在し、例えば、北半球亜熱帯域では時計回りの循環南半球亜熱帯域では反時計回りの循環となっています。

このような海洋表層の循環は、主に海上を吹く風が海面に及ぼす力(風応力)によって駆動されており、地球の自転による効果によって“西岸強化“と呼ばれる現象が見られます。



北半球の亜熱帯循環を例にすると、西岸付近に幅の狭い強い北向きの流れ (西岸境界流と呼ばれ、北太平洋では黒潮北大西洋では湾流にあたる)があり、その東側はゆっくりとした南向きの流れがある領域となっています。

 北太平洋海域をより詳細に見ると、熱帯域には反時計回りの熱帯循環、亜熱帯域には時計回りの亜熱帯循環、亜寒帯域には反時計回りの亜寒帯循環があることがわかります。

このような循環は、いくつかの海流により構成され、亜熱帯循環では、北赤道海流、黒潮および黒潮続流、カリフォルニア海流などの海流により、亜寒帯循環であれば親潮や亜寒帯海流などの海流により構成されています。

                海洋表層の循環の模式図

                (北半球冬季における循環を模式化)




深層循環の変動について

海洋の深層循環は、海水の水温と塩分による密度差によって駆動されており、熱塩循環と呼ばれています。



     

 深層循環の模式図

   海洋の循環を表層と深層の二層で単純化したもので、青い線は深層流、赤い線は表層流を示す。 



熱塩循環は、現在の気候において、表層の海水が北大西洋のグリーンランド沖と南極大陸の大陸棚周辺で冷却され、重くなって底層まで沈みこんだ後、世界の海洋の底層に広がり、底層を移動する間にゆっくりと上昇して表層に戻るという約1000年スケールの循環をしています(上図)。

地球温暖化等の気候変  動の影響により、底層まで沈みこむような重い海水が形成される海域の海水の昇温や、降水の増加や氷床の融解などによる低塩分化によって、表層の海水の密度が軽くなり、沈みこむ量が減少し、深層循環が一時的であれ弱まるのではないかと考えられています。



北大西洋での深層水形成が弱まった場合、南からの暖かい表層水の供給が減り、北大西洋およびその周辺の気温の上昇が比較的小さくなることが指摘されています。



気候変動に関する政府間パネル第5次評価報告書(IPCC, 2013)は、大西洋の深層循環の変化傾向を示す観測上の証拠はないが、1992年から2005年の期間において3000mから海底までの層で海洋は温暖化した可能性が高いと報告しています。

現在、観測によって大西洋の深層循環の変動をとらえるため、米国とイギリスが協力して北緯26.5度に沿った海域で共同観測を2004年から継続しており(http://www.rsmas.miami.edu/users/mocha/)、今後観測結果にもとづいたより詳細な変動が明らかにされることが期待されます(Cunningham et al., 2007; Kanzow et al., 2007; Johns et al., 2011)。 

大西洋の深層循環の予測については、IPCC(2013)によると、深層循環が数十年規模の自然変動により強まる時期があるかもしれないが、21世紀を通じて弱まる可能性は非常に高いとされています。

 また、21世紀中に突然変化または停止してしまう可能性は非常に低いものの、21世紀より後の将来については、確信度は低いが、大規模な温暖化が持続することで大西洋の深層循環が停止してしまう可能性を否定することはできないと報告しています。

   



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