探偵小説は、箱庭的な作品であり、原稿を書くには決められた作法があるそうだ。
その探偵小説を書く際の作法(ルール)というもの(ノックスの十戒)は、絶対的な規則ではないが、10項目ほど挙げられている。
探偵小説家の場合は、ある程度このルールが守られていたようだが、20世紀の探偵小説や、最近のテレビのミステリードラマの場合は、殆ど守られていない。
そのルールの初めの項は、犯人は最初の部分に登場していなければというならないというルールである。
テレビドラマの「コロンボ刑事」は、このルールのお手本で、最初に犯人が犯行を犯すシーンを見せて、コロンボ刑事が、捜査の過程でその証拠を、どうして見つけるかをドラマにしている。
しかし多くのミステリードラマでは、犯人は最後の方に現れて、大権力者やボスであることが多い。
次のルールは、未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならないというルールである。
しかし血液形が、A,B,O,ABの4種類であった時代から、いまやDNA分析の時代になり、毒物や麻薬も多様化して、死因判定も複雑になっている。科学検査の新技術を紹介することがメインになっている番組がふえている。
またディジタル技術の進歩で、パソコンや携帯による情報記録の操作で、事件の証拠を発見する番組もふえている。
「科捜研の女」などは、その最たる番組である。
したがってこのルールは、今や存在しえない時代である。
次のルールは、探偵の判断を全て読者に知らせねばならない。また、その知能は、一般読者よりもごくわずかに低くなければならないというルールである。
このルールも、前の科学捜査のレベルの向上で、視聴者に最後のほうで教えるような番組ばかりになっている。
その他のルールでは、
変装して登場人物を騙す場合を除き、探偵自身が犯人であってはならない。
犯行現場に、秘密の抜け穴・通路が二つ以上あってはならない。
超自然能力で事件解決をしてはならないし、偶然や直感(第六感)による解決を行ってはならない。
などがあげられている。
探偵小説では、アガサクリスティーが、最初にこの作法をやぶり、テレビドラマでは、殆ど作法を知らないものばかりで、とくに女性の直感を強調するものが多い。
犯人の犯行の手口は、最後の10分ぐらいにまとめて説明される番組が殆どであり、そこだけ見れば事件の全貌がわかることが多い。
ノックスの十戒は、完全に消滅した時代である。
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