1)概要:
古代、中世・近代、現代、それぞれの時代において、日本音楽の姿は大きく異なります。
古代は、主に朝鮮半島や中国、ヴェトナムなどの音楽が伝来し、日本の雅楽が形作られていきました。
中世・近代になると、琵琶を用いた琵琶楽が登場し、僧形の盲人などによって諸国に平家物語をはじめとした語り物が広がっていきます。また、能や歌舞伎踊などが登場するのもこの頃です。
現代になると、今度はヨーロッパなどから入ってきた西洋音楽によって、日本音楽を取り巻く環境は大きく変化します。
一時期は広い意味での「邦楽」はすっかり姿をひそめてしまいますが、時代の流れとともに再び注目されるようになります。
2)古代
人の声があるところには歌があり、縄文・弥生時代の古代にも、埴輪などに歌う顔や楽器の形が残されています。
日本は大和政権が成立したあたりから、中国や朝鮮半島との交流が見られるようになり、外国の音楽が日本に伝来しはじめ、はじめに朝鮮の音楽・楽器、次いで中国の音楽・楽器が日本に伝来したようです。
7世紀の推古天皇の時代には百済から伎楽が、仏教伝来とともに楽団として伝わり、続く8世紀には現在のヴェトナム南部の音楽である林邑楽(りんゆうがく)が伝来し、
平安時代初期に入ると中国から渤海楽が伝来しています。これらの音楽や楽器は、宮廷などで演奏される雅楽として伝承されてきました。
3)平安時代
平安時代からは外国の音楽により近い「平安朝の新作の歌曲」が見られるようになり、平安時代中期に入ると、今様と呼ばれる歌曲が登場します。
今様は平安時代末期に大流行し、白拍子などの中にも今様の名手が多くいたようです。
4)中世・近世
中
世に入ると琵琶を用いた琵琶楽が登場します。琵琶楽とは、琵琶を楽器として用いた音楽や語り物などの総称で、主な琵琶楽としては、盲僧琵琶・平家琵琶・筑前琵琶・薩摩琵琶などが挙げられます。
そのほかの中世の日本音楽としては、平曲、謡曲、能、歌舞伎踊などがあります。
平曲とは、平家琵琶を伴奏にしながら『平家物語』を語る音曲であり、諸国を流浪する僧形の盲人たちによって広められていきました。
謡曲とは、中世・室町時代に登場したもので、世阿弥が、能楽の詞章を音楽としての立場から見て称したのが謡曲です。
能の中でも、中世の音楽として名高いのは、猿楽能と田楽能です。
田楽とは、文字通り田植行事としての田舞と中国から伝来した曲芸的なものが組み合わさったものだといわれています。
猿楽能とは現在の能楽の別名ともいえる存在であり、猿楽(滑稽なものまね芸のこと)に白拍子の舞や今様などを組み合わせて完成したものなのです。
歌舞伎踊は中世末期から近世に登場します。日本史にも登場する出雲阿国は、この歌舞伎踊の名手です。
歌舞伎踊とは、それまでの念仏踊をさらに歌舞伎舞踊化したものでありました。
三味線はこのころ南方より渡来して、歌舞伎や遊里の分野で普及しはじめまため上流社会では敬遠されていました。
5)現代
明治の文明開化以降は、ヨーロッパを中心とした西洋音楽が日本に入ってくるようになりました。それに伴って、学校での音楽教育を、ヨーロッパのクラシック音楽をベースにして行わうようにしました。
西洋では音楽発展の場は、神の世界の教会から、王族社会にうつり、やがて民主社会の庶民に移動してきました。
日本では、宮廷社会から武家社会にうつり、民主化が遅れて庶民の場に広くうつるのは、明治以後になりました。
日本になかったオーケストラのような大規模の音楽演奏も取り入れられ、音楽文化は飛躍的に広がりました。
それまでは日本音楽といえば地声で歌う浪曲や義太夫などが多かったのですが、西洋音楽においては地声は美しくないとされているので、状況は大きく変化していくことになりました。
日本の歌詞は、哀調を帯びたものが多いのにくらべ、西洋の歌詞は歓喜のものも多いことが対照的です。
第二次世界大戦後は、西洋と日本の音楽をミックスした音楽が見られるようになります。
この音楽が、「現代邦楽」と呼ばれているスタイルです。
「邦楽」とは、大まかにいえば日本の伝統音楽のことで、その種類は非常に多岐にわたっており、多くの音楽辞典では「北海道のアイヌ民族の音楽と、沖縄の音楽を除いた日本の音楽の総称」とされています。
明治時代以降、一時期は西洋音楽が主流になっていたことから、「邦楽」は人々から遠い存在となりました。
しかし、「現代邦楽」ブームや1990年代以降の「邦楽ニューウェーブ」によって、再び「邦楽」に注目が集まるようになったのです。
2002年度からは、中学校の音楽授業において和楽器を教えることが義務付けられるようになるなど、日本の音楽教育方針も大きく変化したといえます。
音楽は大勢で聴き楽しむものであった時代から、家庭にはいり、各部屋に入り、今やウオークマンのように、1人で聴いて楽しむ形も増えてきました。
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