2022年9月2日金曜日

ノックスの十戒

 ノックスの十戒(ノックスのじっかい、: Knox's Ten Commandments)は、ロナルド・ノックスが、1928年に編纂・刊行したアンソロジー THE BEST DETECTIVE STORIES OF THE YEAR 1928 (ヘンリー・ハリントンと共編)の序文において発表した、推理小説を書く際のルールである。「探偵小説十戒」(: Detective Story Decalogueともいう。本記事では単に「十戒」と表記する。

S・S・ヴァン=ダインによる「ヴァン・ダインの二十則」と並んで推理小説の基本指針となっている。

日本では探偵小説家の甲賀三郎が1935年に雑誌『月刊探偵』で紹介(「探偵小説入門」1935年12月号、1936年1月号、4月号)、翌1936年3月には評論家・翻訳家の井上良夫が、ノックス『陸橋殺人事件』の翻訳(柳香書院『世界探偵名作全集』第5巻)の訳者序文で紹介した。戦後、江戸川乱歩が1951年刊行の評論集『幻影城』冒頭に収めた「探偵小説の定義と類別」で取り上げている。

なお、「十戒」を意図的に破った作品や、「十戒」の記述を逆手にとったトリックを用いた作品も数多く存在している。ノックス自身「すべての作家にルール厳守を望むわけではなく、げんにこの選集に採録した幾編にも、ルール違反が明らかに見受けられる」と認めている。ノックス自身も「十戒」を破った作品を発表しており、ユーモア精神から冗談半分に書かれたとする見方も多い。

内容

  1. 犯人は、物語の当初に登場していなければならない。ただしその心の動きが読者に読みとれている人物であってはならない。
  2. 探偵方法に、超自然能力を用いてはならない。
  3. 犯行現場に、秘密の抜け穴・通路が二つ以上あってはならない。
  4. 未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならない。
  5. 主要人物として「中国人」を登場させてはならない。
  6. 探偵は、偶然や第六感によって事件を解決してはならない。
  7. 変装して登場人物を騙す場合を除き、探偵自身が犯人であってはならない。
  8. 探偵は、読者に提示していない手がかりによって解決してはならない。
  9. サイドキックは、自分の判断を全て読者に知らせねばならない。また、その知能は、一般読者よりもごくわずかに低くなければならない。
  10. 双子一人二役は、予め読者に知らされなければならない。

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