2022年2月9日水曜日

地球の自転によるコリオリの力

 コリオリの力は、地球の自転速度が緯度によって異なるために、南北に移動する物体に働く見かけの力です。

見かけの力という考え方は少し難しいですが、力学において非常に重要です。

コリオリの力をイメージできる最も身近な例は、メリーゴーラウンドです。
反時計回りに回転するメリーゴーラウンドに乗った状態で、互いに反対側にいるAさん(投げる役)とBさん(キャッチする役)がキャッチボールをするとします。
これを上空から見ると、下図のようになります。Aさんがまっすぐに投げたボールは、Aさんがボールを投げたときにBさんがいた場所へ届きます。




この現象をメリーゴーラウンドに乗っているAさんから見ると、下図のように、ボールが右向きに曲がるように見えます



これをイメージできれば、コリオリの力を理解できたと言っていいでしょう。ちなみに、コリオリの力は回転する座標系の上であれば、どこでも同じように作用します。

(なお、同じく回転する座標系の上で働く遠心力は、中心から遠ざかる方向に働くのに対し、コリオリの力物体の運動の進行方向に対して働くものですから、混乱しないようにしてください。)


円盤の中心からボールを投げた場合でも、円盤の外にいる人には、ボールが真っ直ぐ飛んでいるのに、円盤の中にいる人には、ボールが曲がるように見えます。
人間は皆、地球の球体の上に乗っている立場ですから、見かけの力で曲がってみえます。。

具体的な例では、砲弾はコリオリの力の働きを受けます。
北半球で真北に砲弾を撃った場合、コリオリの力が働くため、標的よりも東側にずれてしまうのです。そのため1000mクラスの長距離狙撃をするときには、コリオリの力を考えて補正しなくてはいけません。
ほかにも、海流や極軌道の人工衛星などもコリオリの力を受けて、北半球では右側へそれていくように見えます。。

さらに、コリオリの力が働く例として台風が挙げられます。
台風は低気圧の一種であり、中心に近いほど気圧が低くなっているため、外縁部から中心へ空気が運動し、風が吹き込みます。
この風に対してコリオリの力が働き、北半球では北向きの風には右向きの力が働き、回り道をして台風中心に向かいます。南向きの風には反対に左向きの力が働きます。(下図)
だから風は台風は北半球では反時計回りの渦を、南半球では時計回りに渦を巻きます

北半球の台風


総括的表現:
地球は東向きに自転しています。このとき、地球は球体ですから、一周の距離は高緯度地点ほど短く、低緯度地点ほど長くなり、そのため自転速度が異なります。
これを力学的に言うと、地球上の物体にはつねに東向きの力が加わっているが、その力は高緯度地点では小さく、低緯度地点では大きいということです。
したがって、物体が南北方向に運動するとき、高緯度地点から低緯度地点へ運動する場合は東向きに加わる力が大きくなるのに対して物体は静止しようとし、低緯度地点から高緯度地点へ運動する場合はその力が小さくなるのに対して物体は運動しようとします
このため前者では西向き、後者では東向きに見かけの力が働きます
(北半球では右向き、南半球では左向きに働くと言い換えることもできます)。
これがコリオリの力の正体です。





北半球で北極から赤道に移動するときのコリオリの力



  • コリオリの力は、地球の自転によって発生する
  • 発生する理由は、緯度によって速度と遠心力が変わるため
  • 進行方向に対して、北半球では右向き、南半球では左向きに力がかかる
  • 遠心力は赤道上で最大、両極で0になる
  • コリオリの力は、両極で最大、赤道で0になる
  • 遠心力の変化率が大きいところほど、コリオリの力は大きくなる
  • 自由大気の中では、気圧傾度力とコリオリの力が支配的になる
  • 自由大気の中では風向きは等圧線に平行になり、これを地衡風という

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