室生寺の本堂と五重塔 |
本堂の六手如意輪観音像 |
室生寺の密教化が進んでいた鎌倉時代後期、延慶元年(1308年)本堂が建立された。梁間5間のうち、手前2間を外陣、奥の3間を内陣とする。この堂は灌頂堂(かんじょうどう)とも称され、灌頂という密教儀式を行うための堂である。
内陣中央の厨子には、上の写真の六手の如意輪観音坐像(重文)を安置し、その手前左右の壁には両界曼荼羅(金剛界曼荼羅、胎蔵界曼荼羅)を向かい合わせに掛け、灌頂堂としての形式を保持している。
和辻哲郎は、昭和5年の随筆「六本の手の如意輪観音」で、その優美な姿をつぎのように絶賛している。
「作者はいかにしてこのような構図に成功したか。・・・
我々にとって人間の腕が常に二本であるように、作者にとってもまた人間の腕は二本であった。二本の腕の相互的な連関を離れて人体の腕はあり得ぬのである。作者は相連関する二本の腕を作った。ただそれを三度重ねたに過ぎぬ。」
梅原猛らの「仏像:心と形」では、類似の観心寺の六手如意輪観音像を紹介している。こちらは国宝で、原色日本美術全集にも掲載されている。
観心寺の如意輪観音像 |
弘法大師により輸入された新しい経典によった密教の仏像で、インド彫刻のような官能的な柔らかい肉身をもったものとした作風である。
和辻哲郎はここも訪問したが、住職不在のため拝観できなかったことを残念がっている。
籔内さんの「仏像拝観手引き」では、どちらも掲載されなかったのは残念だ。
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