ルビコン川の位置 |
カエサル軍、ルビコン川を渡る |
カエサル |
ルビコンの名前がオートファジー研究の一部にも使用されています。 |
オートファジーとは、ギリシャ語の「ファジー(食べる)」に「オート(自ら)」を組み合わせた造語だ。細胞内に存在するたんぱく質などから余計なものを取り除いて生まれ変わらせる仕組みで、メカニズムは意外とシンプル。
人間の細胞内に膜が出現して、細胞内にあるたんぱく質などを包み込んで球状の構造「オートファゴソーム」を作る。このオートファゴソームに、たくさんの分解酵素が入った「リソソーム」という袋が接触・融合することで、中身のたんぱく質などが分解される。これにより、オートファゴソーム内の有害物質が除去されるとともに、たんぱく質がアミノ酸まで一度分解され、体内で新しいたんぱく質として再合成される。
オートファジーは日常的に起こっており、人間は体内の細胞の中身を少しづつ入れ替えている。体重60キログラムの成人男性の場合、1日に約240グラムのたんぱく質が体内からオートファジーによって再合成されるという。
細胞内のたんぱく質や有害物質を膜が包み込み、分解酵素が分解する。しかし、ルビコン(図中の赤い「×」)が分解酵素との融合を妨害すると、オートファジーが起こらなくなり、老化につながる
オートファジーを促進するたんぱく質は以前から幾くつも発見されていたが、ブレーキは珍しい。
「ルビコンをコントロールすることで、老化を止められる可能性も出てきた」
ルビコンの抑制によって寿命を延ばす効果は、動物実験では確かめられている。
遺伝子操作によりルビコンの働きを抑えた線虫を観察したところ、オートファジーの活性化が認められ、寿命が平均20%も延びたという。老いても活発に動き続けていたため、健康寿命も延びたと考えられる。
「実験では、年老いた線虫が通常の線虫に比べて2倍の運動量を示した。人間に置き換えれば、80歳の老人がフルマラソンを容易に走りきるようなものだ」