薔薇見れば薔薇のゑまひ、
牡丹に逢はゞ牡丹の威
あやめの色のやさしきに優しく
女人われこそ觀世音ぼさつ。
柳絮直ければ即ち直く
松嚴くしければわれも嚴くし
杉いさぎよきに、はた、いさぎよく
女人われこそ觀世音ぼさつ。
そよ風にそよとし吹かれ
時に、はた、こゝろ浮雲。
足裏の土踏むちから、
女人われこそ觀世音ぼさつ。
人のかなしみ時には擔ひ
よろこびを人に送りて
みづからをむなしくはする
女人われこそ觀世音ぼさつ。
ぼさつ、ぼさつ、觀世音
千變萬化
圓融無碍もて世を救ふ
女人われこそ實に觀世音。
《岡本かの子『觀音經を語る』(大東出版社 昭和17年)所収》