2017年9月17日日曜日

AI Robot:「Robotics for Happiness」

AI Robot についての、金出教授の講演内容:
WRSプレ大会を1年後に控えて、東京都内でWRSのメッセージ:「Robotics for Happiness」をテーマに講演。

金出氏は1974年京都大学で工学博士号取得後、京都大学の助教授などを経て、1980年に米国カーネギーメロン大学に移った。1992~2000年には世界的に有名な同大学ロボット研究所所長として勤務。1998年からワイタカー冠全学教授の称号を持ち、現在コンピュータビジョン、マルチメディア、そしてロボット工学において先駆的研究に取り組んでいる。

 主な研究成果には、1981年発表の動画像処理における最も基本的アルゴリズムとされる「Lucas-Kanade法」、1995年に最初にアメリカ大陸横断した自動運転車「Navlab 5」、2001年のNFLスーパーボウルで採用された30台以上のロボットカメラで270度の視野の映像を撮影する「Eye Visionシステム」などがある。
 こうした実績を持つ金出氏が、今回取り上げたのが「最近のロボットの進展」である。AI Robot には3つの軸があるという。

1つ目の概念は、コンピュータで動きをプログラム化するようになったことから生まれる。
以前のロボットは、からくり人形のように機械機構的なプログラムで動いた。これが近代になると、コンピュータで動きをプログラム化するようになった。そのため、ロボットはメカニズムという概念から離れて、情報によって駆動するようになった(インフォメーションドリブンメカニズム)。
これが現在のロボットの姿を作り出したといえる。これが1つ目の進展である。この概念を得た時点で「機械は必ずしもメカニカルなシステムでないということに気が付いた」という。

 2つ目の概念は「ロボットが人を完全にトラッキング(追跡)できるようになった」ということから生まれている。

今までのロボットは単にモノを認識するだけだったが、今は人の動きを完全にトラッキング(追跡)できるようになってきている。
従来の単なる大きな行動の分類(歩く、座る、蹴るなど)でなく、四肢や指までの精密な動きを完全に追跡する技術が登場してきている。
これによりロボットの概念は「『人の代わり』から『人とともに』『人のためへ』」(Help)へと変わってきた」と金出氏は説明する。
人が何をしているかが分からなければ、助けようがないということからだ。

 金出氏はその1つの例として、最近の研究の中で取り組んでいる「Smart Headlight」を紹介した。この研究は「夜間、運転中に雨や雪が降ってきた時、水滴や雪にライトが当たり白っぽく見えて、視界が悪くなる。これを、ヘッドライトの光を雨に当たらない様にコントロールする機械」だという。

 この機械の開発は簡単だそうで、少しだけ雨に光を当てて、すぐにカメラで画像を撮影する。そこで「どこに雨粒があるか」を見て、車の前方のカメラとライトを制御するという仕組みである。


 実際にカメラとプロジェクターで実証を行ったという。カメラで画像を撮影し、雨粒に当たって反射する光をオフにすると、雨粒が光らなくなる。この機械を車載すれば雨粒が光らなくなり、雨の夜でも明瞭な視界が確保できる。


 この他、対向車のハイビーム、ロービームについても、相手の運転手の目に入る光線だけをオフにすれば、相手はまぶしくなくなる。この装置を有効活用すれば夜間の横断者も見つけやすくなり、人間の安全を守るためのシステムとなっていく。
こうした「人を見て、人を助ける形への進展」が第2の概念の進展だという。

 3つ目の概念の進展は「個々のシステムから、トータルあるいは環境システムへ」(Enhance)というものだ。

 これまでロボットは1つ1つのシステムが個々に動くようなかたちだった。しかしこれからは、ロボットが働く環境において、総合的に価値を実現していかなければならない。

 例えば、農業用ロボットとして、刈り取りだけにロボットを使うのでは効率が良くならない。他にも、農作物の生育の状況などを自動的に見極めることや、刈り取り後の検査やパッキングなど、育成から出荷までをトータルで取り組む概念が必要となる。
現在はそうした方向に向かっている。技術者たちはこうしたシナリオを描く必要がある」と述べている。

 この他、小さなマグネットを外から操作して、目の手術を行うシステムの研究例や、バクテリアの動きをまねした器具をマグネットで作り、それを血管の中に通して動かし、薬を病巣に確実に送る研究例などについても紹介した。

金出氏は「ロボットは、こうあるものだという凝り固まった概念から抜け出すことが必要だ」と強調する。

さらに、イノベーションの組織と環境については「異分野のインタラクション、研究と教育の密接な関係、地域と密着した活動(地域の強み)、アイデア・資金・研究開発・企業のダイナミズム、人材をひきつける・提供する、などの要素が必要だ」と金出氏は指摘する。

さらに「『理想のロボットのすべきこと=(イコール)人のしたいこと-(マイナス)その人のできること±Δ(プラスマイナスデルタ)』という公式が成り立つ。つまり、その人が自分でできることは何も手を助けない方がよい。『±Δ』はその機能を保持する、または失った機能を取り返すということであり、それを分かっているロボットがハピネスなロボットとなるだろう」と金出氏はロボットの理想像について語っている。



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