2018年9月7日金曜日

北海道の大停電

9月9日未明の「平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震」と大停電。

 
地震の影響で北海道電力(北電)の火力発電所が全て緊急停止し、全道295万戸が停電となった.

地震の震度が震源地で7もあり、震度4以上の地区が全北海道の西部、中部の広範囲で発生した。






この地震は、2003年の十勝沖地震M8のような日本海溝が震源ではなく、日本火山フロントが震源でもなく、浅い震源のかくれ断層である。逆断層とも言われており、プレート内の
断層が乗り上げるタイプで、広い範囲の地震を
発生する。







震源地の近くに苫東厚真火力発電所があり、タービン付近から出火するなど、大きな損傷がおきて、稼動できなくなった。
北海道の電力系統の規模(電力需要・供給の規模)は約400万キロワット。その半分近くが苫東厚真火力発電所に165万キロワットが集中していた。


北海道の電力網は、需要の多い西部に偏っており、他の火力発電所の負荷が急増して、全電力網が制御不能になる状態となって、「ブラックアウト」に陥った。


苫東厚真(アツマ)発電所は新鋭主力火力発電所で、特に2号機, 3号機の容量が大きく、1u,2u,4u全部(3号機は廃止)が停止すると、その落ちた分を在来の他発電所が増出力しなければならなくなり、系統負荷要求(demand)に応えようとする。

その結果、発電機の容量の能力を超えて、結果周波数が下がり、各発電機は系統から自動的に切り離してを過負荷・過熱から守る。

北電は全容量が(東電などと比べると)小さく、他火力発電所も小型の長年使用してきたBTG(Boiler, Turbine, Generator)であり、厚真の3基が停止した分を瞬時にはカバーできず 次々に自ユニット停止が連鎖していったものと思われる。

電気事業連合会によると、電力大手が管内全域で長期にわたり停電となるのは、戦後に現行の10電力体制になって初という。

東日本大震災で東北電力管内と東京電力管内で計約870万戸が停電したが、管内全域ではなかった。

この差が何故おきたかはまだ報道されていない。周波数の低下やみだれが原因と解説している記事もあるが、これは結果の現象であって原因ではない。
今後の対策として石狩湾新港LNG火力発電所(北海道石狩市)の新設、本州との間の北本連系線の増強、という対策を進めている。今回機能しなかった北本連系線も、きちんとした運用ルールを検討すれば、有効に機能するはずだ。


この全道大停電は、泊1,2,3号機が動いていれば防止できたという意見もあるが、原発に地震被害があれば、さらに深刻な問題が発生していただろう。

ただ一つ、希望を持てるニュースは、新しいレドックスフロー電池が地震に耐えて正常に稼働していたということである。


これは、バナジウムなどのイオンの酸化還元反応を利用して充放電を行う蓄電池で電極や電解液の劣化がほとんどなく長寿命であり、発火性の材料を用いていないことや常温運転が可能なことから安全性が高いなど、電力系統用蓄電池に適した特性を持っている。このため、今回の地震対策や、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入を拡大していく上で必要となる系統の安定化技術として期待されていまる。




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