2011年10月31日月曜日

二人の小説家

今朝の新聞では、わたしと同年代の二人の小説家の名前がでている。
北杜夫は訃報であり、丸山才一は文化勲章受賞の朗報である。
対照的な二人であり、対照的なニュースである。
私には北杜夫のほうがなんとなくなじみ易い作家であった。
たしか一度大病をされたあと回復され、今月1日にトークショウをした時までは元気だったが、23日に体調を崩して入院したそうで、急な旅立ちだった。
たまたま二人が敗戦の日8月15日の記憶をかいている本をよんだ。

 北杜夫は旧制高校生で、学徒動員さきの職場で王音放送をきいた。
敗戦ということがおぼろげに理解できて、肩をたれうつむいてぼんやりしていた。職場の仲間のなかから突然万歳の声が湧きあがった。職場で働いていた朝鮮人労働者のあげた叫び声だった。同胞であると信じていたのに、唖然として悔しさわきおこってきたという。

 丸山才一は歩兵砲大隊の兵隊として、青森の部隊で王音放送をきいた。
隊員の理解がまちまちで、ますます頑張れという説、まだどうなるか解からないという説、アメリカが日本人を蹂躙するという説など乱れとんだ。
才一はきれぎれのラジオの言葉から、日本が負けて日本軍がなくなったことを解説し、言葉が過ぎたため、下士官からさんざん殴られたという。

二人の対照的な作品の姿がこのころから滲んでいるような記録である。

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